シリーズ企画
  The Week!~選手たちの平日~ 
   第3回 2016年 1月22日 

 府中アスレティックFC 谷本監督編

  
 「The Week!~選手たちの平日~」では、フットサル選手の1週間に着目し
 どのような生活を送っているのか、週末の試合に備えてどんな調整をしているのかを
 日常の場にお伺いしてインタビューし、じっくりとお伝えします。

 
 第3回目は「選手たちの平日」というタイトルなのに府中アスレティックFCの谷本監督です。
 プレーオフを勝ち抜きFリーグ2位となった府中アスレを率いた谷本監督。
 今回は府中アスレの一週間のスケジュールと、あまり知られていない谷本監督の驚くべき経歴を明らかにします。

 

 四国出身、早大大学院卒業! 理系で旅人、フットサル経験1年!

選手を引退して就任する監督が多いが、谷本監督は選手時代をほぼ知られていない。今回は府中駅の南、大国魂神社そばにある府中アスレティックFCの事務所にお伺いし、谷本監督の経歴とチームの一週間のスケジュールについて詳しくお聞きしました。

 

<Q.まずお住まいやご家族についてお聞きしたいのですが?>
住まいはこの事務所の近所です。それで一人暮らしです。事務所までは自転車で通勤し、遠征などの移動はチームの荷物車で、クラブのスタッフと一緒に移動しています。

<Q.すみません、谷本監督の経歴を僕はあまり知らないのですが、どういった経歴なのか教えて頂けますか?>
僕の経歴があまり表に出ていないですからね。あまり聞かれないですし。

<Q.まず生年月日と出身地をお聞きしたいのですが?>
生年月日は1982年9月1日生まれの33歳。香川県出身で大学までずっとサッカーをやっていました。高校までは公立で、大学は高知大学です。高知大学サッカー部は全国大会常連の強豪で、僕が1年生の時には全日本大学サッカートーナメントで全国3位、4年生の時には天皇杯でも3回戦まで行きました。でも僕は4年生までずっと選手をしていたわけではなく、大学3年の時からコーチをしていました。

<Q.高知大学といったらサッカーも強いですし国立ですね。でも在学中にコーチになったのはどうしてですか?>
高知大サッカー部にはAチームとBチームがあるんですが、Bチームは普段から4年生がコーチをして自主的に練習をしているんです。それである時期、4年生が教育実習で不在の時に僕がコーチ役をやりまして、するとチームの成績が良くなったので、4年生が帰って来てもBチームのコーチを続けまして、その評判が良かったので、Aチームのコーチもやることになったんです。

<Q.するとその頃からコーチの才覚はあったのですね?>
そうでもないんですが、元々人に教えるのは好きで、教職に就きたいと思っていましたからコーチ役は楽しかったことはありますね。


<Q.教員になろうと思っていたんですか?>
そうですね。ただ僕は数理情報学科という所に在籍していたんですが、実は2年生を終えて3年生になるタイミングで休学しまして、1年間オーストラリアに行っていたんです。

<Q.1年休学しているんですね。オーストアリアは留学ですか?>
いえいえ。語学を学びに行ったのもあるんですが、単に海外に行ったことがなかったので新しいことを経験したくて、留学ではなく普通に休学して1年間オーストラリアで暮らしました。最初の3ヶ月はワーキングホリデーで語学学校に行って、でもその後はフリーで好きなことをやっていましたね。現地でアルバイトしたり農家で手伝いながら寝泊りしたり(笑)。

<Q.凄いですね!いい経験ができましたか?>
それはもう日本では体験できないことを沢山経験できましたね。オーストラリア人だけでなく、インド人とかスイス、ドイツ、韓国人とかいろいろな人と出会えましたし、簡単にいうと日本人の感覚にないくらい「大らか」というか、テイクイットイージー=気楽に行こうぜ、っていうのを体感しましたね。
でも僕は一浪した上に休学したんで、4年生の時には他の学生より2つ年上になってしまって。それもあって他の選手と一緒にはやり難いっていうのもあって指導者の側に回されたっていうのもありますね。

<Q.驚きました。海外で長期間、旅して来たっていう人の話はたまに聞きますが、全国レベルの体育会系で本格的に活動している人が途中で1年休学してというのは初めて聞きました。>
僕にとって大きな経験でしたね。それがその後の僕の多くを占めているというか、その後の人生の考え方が大きく変わったと思います。

<Q.大学卒業まで、まだフットサルはしていないですね。>
そうですね。そのあと早大大学院に行って、九州に行って、就職して、府中で事務をして・・・長くなりますよ。

<Q.早大大学院!? 就職? えーと、ではなぜその後監督になったかはまた後で聞かせて頂くとして、この企画のテーマである平日のスケジュールを教えて頂けますか?>
アスレは午前中が練習なので、昼に練習が終わったらこの事務所に来て、夕方5時くらいまで事務仕事をしています。
練習の休みは試合の曜日に関わらず月曜日です。ですので金曜日に試合があれば土日月と休みになりますが、日曜日が試合の時も休みは月曜日だけです。金曜日の夜に試合の時は午前中の練習はなくて、試合前に早く集まって練習してから試合に挑みます。

練習場は、味の素スタジアム(調布市の西端・府中の東)のフットサル場ですが、週初めの火曜日だけ、小金井市(府中の北)と府中市の境にある東京工学院専門学校の施設で行っています。東京工学院専門学校はウチのスポンサーをやって頂いているんですが、トレーニングジムと体育館が併設されているので、ウエイトトレーニングを取り入れて練習しています。
それで練習が終わった午後は事務所に戻って、チームのスケジュール管理などの事務仕事があればそれを手伝いますし、それが終われば練習メニューを考えたり映像編集をしたりしています。


  谷本監督・ある1週間のスケジュール
  

<Q.遠征の時はどういったスケジュールで動くんですか?>
うちは基本前日移動です。例えば土曜日の夜に神戸で試合、っていう場合には、金曜日の早めの時間に移動して、翌日の試合の時間と同じ時間に現地で場所を取って練習します。
試合が午後2時とか早い時間なら、前日の同じ時間にこっちで練習してから遠征に出ます。そうすると現地に到着するのは夜になりますが、とにかく試合と同じ時間に前日練習することを大事にしていますね。

<Q.移動の手段は?>
飛行機は北海道と大分だけで他はバスですね。ウチはチームバスはなく、その都度観光バスを借りています。
出発時間は翌日の試合の時間によるわけですが、現地に着いてから前日練習の場合には朝7時とか8時に出ることもありますね。神戸や大阪なら7-8時間移動にかかりますから、翌日の試合が例えば午後3時の時には、その前に着かないといけないので、早朝に出発しないといけませんからね。

<Q.前日練習は必ずするんですか?>
そうですね。それにバスの移動だと体がコワ張ってしまうのもありますから、それをほぐす意味もあります。

<Q.昼にこちらで練習して現地に夜遅くに現地につく場合は?>
それは全体練習はないですね。選手個々がストレッチしたりはしていると思いますが、そこは選手に任せています。

<Q.食事は皆で取るんですか?就寝時間は?>
夕食は各自自由です。寝る時間も自由ですが、翌日の朝食は時間を決めてチーム皆で取ります。

<Q.朝食の時にはミーティングなどは?>
それはないですね。もう事前に戦略は伝えてあるので、会場に入ってから簡単に10分くらいの確認だけです。

<Q.すると試合が夜だと朝食からかなり時間が空きますね。>
その時間も選手は自由なのですが、あまり時間があると昼寝をし過ぎてしまう選手も一部いたりして、それも良くないなと思った時には、自分たちが勝った試合の映像などをまとめて見せて、良いイメージを持たせて時間をつぶしたりすることはあります。

<Q.昼に観光に行ったりもOKなんですか?>
さすがにそれはないですね。皆ホテルでゆっくりしています。

<Q.例えば神戸で中華街に昼食取りに行ったりは?>
それ位ならありますね。まあその程度ですね。

<Q.当日移動は全くないのですか?>
浜松で夜の試合ならありますね。名古屋より向こうならありません。

<Q.小田原など、関東のアウェーの試合は?>
それは各自現地集合ですね。試合の2時間前に集合が基本です。

 

<Q.次の対戦相手の分析というのはどの程度やるんですか?>
相手チームにもよりますけど、ちょうどウチは月曜日にチームの活動がないので、その日に一日かけて分析を一気にしてしまいます。火曜日にリーグから前節の映像が届くんですけど、それを見てからだと間に合わないので、大体1節前の試合を月曜日に見て、作業の進み具合にもよりますが、前回戦った時から相手に何か変化=戦術が変わったとか新しい戦力が入ったとかがあれば、火曜日の練習の時にある程度編集したビデオを見せて選手に伝えます。今週こういう戦術で戦おうと思っているからこういう練習をしようとか、それを意識してトレーニングしてくれ、といったことを伝えます。

<Q.ビデオは火曜日の工学院の施設で見せるんですか?>
プロジェクターでコートの壁とかを使っても見せられるので場所はどこでも大丈夫なんです。だから火曜日の工学院でなくても味スタで水曜に見せたりもできます。

<Q.ビデオの編集の要点は?>
相手の攻撃と守備の形を見せて、長くても10分くらいですが、それを練習を始める前に全員で見て、相手がこうだからこういう戦術で行くぞ、という話をします。

<Q.練習のメニューは相手によって変わるんですか?>
毎週同じということは絶対ないですね。軸となるメニューはありますけど、それを毎週アレンジして。たとえば前プレが強いチームだったら、いつものボール回しに2タッチ以内で離すという制限をつけたりとか、そういう工夫をしています。

<Q.火曜日にビデオを見せるとして、試合が近づいた金曜とかに最終確認のミーティングもあるんですか?>
あります。昨年までは必ず試合の前日に時間を取っていたんですが、いまも木曜日か金曜日に10分から15分くらい最新の映像を選手に見せて、確認のミーティングがあります。そうすると監督としては2度ビデオを編集しなければいけないので大変なんですが、やはり理想でいえば週の初めと最後に両方見せたほうがいいと思いますね。
まず週の始めに頭を次の相手に切り替えさせて、そして最終確認と最新の相手の追加情報を入れて、試合に臨むべきだと思います。

<Q.ビデオの編集は大変ですよね?どれくらい時間をかけるんですか?>
いま僕は1試合につき1時間くらいですね。

<Q.早いですね! それを事務所にいる時にやるわけですね。>
直前の試合を含め、勝った試合と負けた試合、前回の自分たちとの対戦の試合、で計4試合くらいを見て戦術を考えながら編集しますね。
戦略を立てる時はあまり前節の試合には拘らないですね。対戦相手が自分たちでない試合では戦い方も違いますし、一番参考にするのは前回の自分たちとの対戦ですかね。選手も自分たちの試合のほうがイメージしやすいのもありますし。
ただセットプレーなどは新しいプレーを取り入れたりするので、最新のゲームを見たほうがいいと思いますので、そういうのが見つかった時などは火曜日以降でも追加してビデオを見せたりしますね。

 

<Q.毎週変わるという練習の内容はどんなものですか?>
練習メニュー自体や、アップについてはあまり変えないんですが、中身のテーマが変わるんです。火曜日が対人形式やカウンター形式の練習。水曜日が紅白戦。木曜日と金曜日が攻撃か守備に絞った練習を一日づつ。

<Q.攻撃や守備に絞って一日づつ、というのは?>
例えば次の相手が名古屋さんだったりしたら、今日はハーフでの守備がテーマだとか決めて、形を確認したりメンバーを組み変えてやったりします。他にも今日はプレス回避がテーマだとか、前からプレスに行ったりとか、それを攻撃か守備かに絞ってで木金で1日づつやります。

<Q.そうすると火曜から金曜の4日間で一つのサイクルになっているんですね。府中はフィジカルのトレーニングを重視しているといつも言っていますが、どんな内容ですか?>
ウチは最低週2回ウエイトトレーニングを行います。火曜日の練習ではアップに45分から1時間くらいかけるんですが、その時にフィジカルコーチとじっくりウエイトトレーニングをします。それと木曜日か金曜日に味スタのコートの横にバーベルを用意して、これもアップと合わせて15分から30分くらいトレーニングします。僕らはよくウェイトトレーニングは強めのストレッチだ、って言っていて、だからアップの時にやって、これで体をほぐすことにもなると考えています。

<Q.府中はフィジカルの強い選手が多くて、これはもちろん狙って集めていると思いますが、どういうチームにしたいというコンセプトなんですか?>
Fリーグは日本のトップリーグなわけですよね。これは僕の考えですが、トップリーグの選手は普通の人じゃ駄目だと思うんですよ。ラグビーとか野球とかっていうのはもう見た目で体が違うのがわかるじゃないですか。でもフットサルは、名古屋を除いて私服を着たらその辺のお兄ちゃんと変わらないと思うんです。でもやはりアスリートとして、ひと目で違うというのが当たり前になってほしい。
僕がチームにオーダーしてフィジカルの強い選手を取ってほしい、育ててほしいと言うのはそういう理由です。僕が監督になる前から府中はフィジカルが強かったと思いますが、僕が就任する前の理由は分かりません。でも僕はそういう理由でフィジカルトレーニングを重視しています。ただ確かに中村恭平監督の時から伊藤監督もそうでしたし、アスレが身体に関する興味が深いのは間違いないと思います。
技術的にはウチはFリーグのなかでそれほど上手くないと思うんですが、上手さで名古屋に対抗できるチームでも最後は身体で押し切られちゃうと思うんです。そんな中、身体で名古屋に対抗できるのはウチだけだと思います。それと名古屋相手で言えば、名古屋は勝たなければいけないチームなのでアクションを起こしてきますが、ウチはリアクションでいいので、試合の終盤では体力的にも有利だと思います。なので例え負けていても1点差で後半に持ち込めば、勝ちに持っていくことは出来るという意識は僕にも選手にもあります。

 強いフィジカルと柔軟な戦略でFリーグ2位となった府中の選手たち。
 

<Q.それでは大学を出てからフットサルを始めて、そして監督になるまでの経緯を教えてください。>
高知大学を卒業後、理系でしたしサッカーで生計を立てるなどは考えていませんでしたから、普通に技術者として良い職業に就くために早稲田大学の大学院に進みました。



 <その後、北九州でフットサルに出会い、しかし1年で就職。そんな谷本監督がなぜ府中アスレの監督になったのか?
  その驚きの経緯は会員コンテンツで掲載しています。>





 <以下、続きです。>

<Q.早稲田の大学院とは凄いですよね。>
でも僕が入ったのは情報生産システム研究科というところで、北九州の学術研究都市にキャンパスがあるんです。ですので四国から九州に行きました。

<Q.そこではサッカーはされたのですか?>
そこは周りに街はないんですね。でも近くにフットサル場がありまして、いままでやってきたサッカーがまるで無くなってしまったものですから、そのフットサル場でアルバイトでコーチをやったりしたんです。それがフットサルとの出会いです。2007年のことですね。

<Q.大学院1年というと休学もしていましたから24歳ですか?>
そうですね。で、そこで最初、当時福岡県2部のフットサルチームに入ったのですが、もっと本格的にフットサルをやりたいと考えて、大学院2年になった時に同じコートで練習をしてた当時九州2部だった「ボルク北九州」に入るんです。

<Q.そこで選手として経験を積むんですね?>
いや翌年大学院卒業で、東京に就職が決まるんですね。なので九州でフットサルをしていたので1年と少しですね。
で、卒業を前にした2009年の2月に、フットサルのコーチのC級ライセンスが初めて出来たんです。その講習会を受けに東京に来まして、そこで今アスレのGMの中村恭平さんに出会うんです。

<Q.ちょうどアスレがFリーグに上がる時ですね。その出会いが運命だった?>
そうですね。その時は「来月から東京に就職するんですけど、フットサル出来るところありませんか?」って、聞いただけなんです。そうしたら「うちのサテライトでコーチやってみない?」っていきなり言われて、ライセンス取りに来てるとは言えビックリしたんですけど、もうその時は浦安に家も借りていたし、就職先は日本橋の会社でしたし仕事の忙しさも分からないですから、府中に通うのは難しいと思って断ったんですね。

<Q.でも中村恭平さんとの交流は生まれたわけですね。>
そうですね。それで就職して、まあ恭平さんと頻繁に連絡取っていたわけではないんですが、セントラル大会は見に行って挨拶したり、そういう関係でした。それで就職した会社が液晶テレビ開発のベンチャーだったんですけど非常に忙しくて、就業時間が月330時間とかトンでもない忙しさだったんです。それでエンジョイのフットサルもやる時間がなくて、大学までサッカーをやってきてライセンスも取ってという自分が、まったくサッカーやフットサルに携わらない生活になってしまったということに疑問を感じて、翌年2010年の8月だったんですが、恭平さんに相談したんですね。そうしたら「ちょうどアスレで事務員を一人雇おうと探し始めたところだったから、ウチに来たらどうだ!」と声を掛けていただいて。

   2009年当時、府中アスレの監督だった中村恭平GM
   

<Q.それでアスレの事務員になるんですね!>
そうなんです。府中がFリーグに上がって2年目で思った以上に運営が大変だったみたいで、ちょうどいいタイミングだったようで、巡り合わせというか、それで日本橋の会社は仕事の区切りがいいところで辞めさせていただいて、府中アスレに事務員として入りました。

<Q.その頃、アスレに取材の申し込みをして、当時事務員だった谷本監督とやり取りしたのを覚えています。実は今回谷本監督に興味を持ったのは、運営スタッフから監督になった経緯をお聞きしたいというのもあってだったんです。>
僕も覚えています。最初は完全に事務員でしたからね。サテライトのコーチなどをやることもありましたが基本事務職としてお給料をもらっていますので、定時までは事務仕事をして、夕方時間が合えば練習を見に行ったりしていました。でも仕事が早く終わった時だけですので、週1回くらいです。でも翌年の2010年にはサテライトの監督に、立場としてはなったのですが、実質的には村山竜三さんが指揮を取っていて、ただトップのFリーグの現役の選手だったので、当時東京都2部リーグだったサテライトの公式戦のベンチに入ることはできないので、試合の時には僕が代わりに指揮を取るという立場でした。

<Q.すると実質的には監督をやったり、監督になるための経験を積んだりはしていないのですか?>
そうですね。実際トップチームの監督に2013年度からなるわけですが、2012年にもスポーツマネージャーズカレッジというJFA主催のクラブ経営者用の資格を取りに行ったりして、監督というよりクラブ運営、経営面で経験を積もうとしていましたからね。

<Q.それがなぜ急に監督になることになったのですか?>
2012年は伊藤監督が指揮を取っていたんですが、実は伊藤監督は辞める予定ではなかったんですね。それが彼の一身上の都合で2012年のシーズン終了後に急に退団が決まって、3月中旬から慌てて次の監督を探したんです。それで中村恭平GMとスタッフと僕で話し合いまして、僕がやるという話も上がったんですが、それは6番目くらいの案で、僕が監督になると事務員も減って運営も大変になりますし、まずは監督になってくれそうな人をピックアップして声を掛けました。

<Q.谷本さんの順位が低いのは、監督としての資質の差ではなくて、優秀な事務員である谷本さんがいなくなることが問題だったからなんですね?>
はい、そうですね。なので監督になってくれる人を探したんですが、3月半ばですからね。候補だった人に皆に断られて、まずないだろうと思っていた僕に監督が回ってきたという経緯です。

<Q.でも監督をやりたいという気持ちはあったのですよね?>
それはやらしてもらえるならやりたいという気持ちはありましたけど、自信はありませんでしたからね。責任が大きいですし、でもやれと言われたからにはやるしかない、という感じでした。

<Q.中村GMが監督に戻るという話はなかったのですね。>
それはもうGMとしての仕事が忙しいですし無かったですね。恭平さんとは今でも「あの時は無茶振りだったよね。」と話をすることはありますね。

<Q.それで谷本監督が就任して、選手に戸惑いはなかったですか?>
元々サテライトの監督もやっていましたし、それはあまり無かったですね。でも監督が決まらないうちはチームに残るかの去就を保留していた選手もいましたから、僕の最初の仕事は監督就任の公式発表までの1週間の間に、選手ひとりひとりに会って、こういうチームを作りたいから一緒に頑張ろうという話しをしに行きました。集めてではなく、皆に個別に会いに行きましたね。

<Q.それで選手の反応はどうでしたか?>
彼らは皆プロですから、クラブが決めた人の下でやるしかないというスタンスですからね。それと監督問題と関係なくそのシーズンで辞めた人が多くて、一気に若返ったので、新しい選手が多かったのも良かったですね。サテライトから一気に5人くらい引き上げて、僕より年上の選手も小山とかいましたけど、同じ年の宮田、小檜山、山田とかは話しやすい選手でしたし、上手く進んだかなと思います。

<Q.確かにあの年は若手が多くて、でもすぐにトップチームで活躍した選手も多かったですよね?>
そうですね。あの時は夏のオーシャンカップで準優勝して、しかもあの時は(小山)剛史くんが怪我でいなくて、よくあのメンバーで決勝まで行ったな、と思います。

 

<Q.しかし、監督への経緯を聞いたらビックリです。>
よく地域の子供とか都リーグの監督さんとかに「どうやったら監督になれるんですか?」って聞かれるんですが、困ってしまうんですよね(笑)。そういう時は「情熱だよ!」と言うことにしてます。

<Q.確かに選手としての実績はあまりないですしね。ただサッカー経歴はありますし、ライセンスも取っていますし。>
でも僕の中では、いまでも一事務局員なんですよね。今の僕の役目が監督なだけで、来年は営業をしているかもしれないし、事務局員のみんなと一緒に府中を盛り立てるという一つの仕事をやっているという意識なんです。だから事務所ではビデオ編集などをやるって言いましたけど、まずコートの予約とかサテライトも含めたチームのスケジュール管理やスポンサーとのやり取りとかをしっかりやった上でやっていますしね。

<Q.プレー面以外のチーム全体のことを分かっているという意味では事務員出身の監督というのが意味をなしているわけですね。>
よくスタッフとも「外部の監督だったらクラブの文化を知ってくれてない分、やりにくかったよね。」という話はしていますね。

<Q.監督はいつまで続けようと思っていますか?>
それは今の段階では信頼されているのかクラブからある程度任されています。クラブのためを一番に考えて、僕以外の人がやったほうがいいと思えば変わりますし、そうしたら一旦退いて事務局員に回ったりサテライトを見て若手を育ててたり。でも僕としては辞める時は勝ち逃げしたいんですよね。良い実績を出して辞めればまた次の機会に監督をやるチャンスがあると思うので、若手を育てて、そのメンバーを引き連れて監督に復帰するとか、そういうことが出来る状態で退きたいですね。

<Q.そういう意味では良い成績だと逆に辞めてしまうかも?>
そうですね。今期はオーシャンカップでも優勝しましたし、辞めやすいかもしれないですね。



 

<Q.それにしても数奇な経歴ですね?>
この前、代表合宿の時にミゲル監督に僕の経歴の話をしたら、「その話で本になるね」って言われましたね。でも僕の強みは逆に理系であったり経営を学んだり、他の人にはないその経歴を生かしたマネージメント力とか分析力とか探究心とかだと思うんですよね。それが選手にもいい影響を与えているかなと感じていますしね。

<Q.ところで仕事が終わったあとはどんな生活をしていますか?>
いまは月曜と水曜は女子チームの練習に良く行っていますね。あとスポンサーのお店に選手をつれて飲みに行ったり。まあそれも仕事がらみなので、プライベートでは・・・府中だから競馬に行ったり(笑)。まあそれはたまになので・・・スーパー銭湯には良く行きますね。この辺には、府中にもありますし、稲城とか国立とかよみうりランドとか結構スーパー銭湯は多いので。まあでもやはりフットサル中心の生活ですね。

<Q.今後ですが、もちろんFリーグの優勝を目指しているとは思いますが、次の目標はどこになりますか?>
いままでのフットサル選手は、サッカーから始めて自分たちでフットサルを磨いて選手になった人がほとんどだと思うんですが、今年山田というGKがトップに入ってU-18の日本代表候補にも入ったんですけど、彼はアスレのスクール生で府中市出身でもありますし、これからはフットサルを地元でやって育った選手がチームに入ってという、そういうつながりを作っていければいいですね。今どのチームもホームタウンをフットサルの町と言っていますけど、府中は本当に昔からフットサルが盛んと言われてきましたから、そういう選手が多くプレーして、町の人からもっと親近感を持って見てもらえるチームにしていきたいですね。

<Q.Fリーグの今後について何か提案はありますか?>
そうですね。僕ら各チームがプレーのレベルを上げる、地元を盛り上げる、リーグがもっとメディアを活用して露出を増やす、とかはあると思うんですが、それはどこもやっていると思うので、そういう面以外で言えば、セントラルはプレーオフだけにして、完全ホーム&アウェーにしたほうがいいんじゃないかなとは思いますね。たぶん試合数を増やすことで観客動員数を増やしたいとかがあると思うんですが、それで一試合が薄まってしまうより、試合が少なくても内容を濃くして、一度来た観客にリピーターになってもらうとか、その分代表活動に力を入れるとか、そうしたほうがいいのではないかと思います。

<Q.セントラルは例えばミニゲーム制にして1日目ABに分けた総当りリーグ戦、2日目はトーナメントで優勝チームには勝点10、とかにすれば一発逆転もありますよね?>
それはいいアイデアですね(笑)。僕はそういったことも面白いと思います! とにかく何でも試みて、1万人とかの会場がいっぱいになるゲームをしてみたいですよね。それがひとつの目標ですね!


 

  以上で The Week 谷本監督編は終了です。
  谷本監督、今まで明かされなかった経歴など貴重なお話、ありがとうございました!
 
  

  次回は浦安・高橋健介選手を予定しています。
  ぜひご覧ください。



    


(写真/記事:中根高磁)  

 

               
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Fリーグ順位表

順位 チーム 勝点 得失
1 → team logo 名古屋
オーシャンズ
30 +59
2 → team logo バサジィ大分 26 +34
3 → team logo フウガドール
すみだ
23 +4
4 → team logo 湘南ベルマーレ 18 +6
5 → team logo バルドラール
浦安
18 +1
6 → team logo シュライカー
大阪
18 -1
7 → team logo ペスカドーラ
町田
18 -3
8 → team logo 立川府中
アスレティックFC
16 +1
9 → team logo ヴォスクオーレ
仙台
10 -17
10 → team logo Fリーグ選抜 7 -21
11 → team logo エスポラーダ
北海道
6 -21
12 → team logo ボアルース長野 1 -42

2019年第11節終了時

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