シリーズ企画
  The Week!~選手たちの平日~ 
   第3回 2016年 1月22日 

 府中アスレティックFC 谷本監督編

  
 「The Week!~選手たちの平日~」では、フットサル選手の1週間に着目し
 どのような生活を送っているのか、週末の試合に備えてどんな調整をしているのかを
 日常の場にお伺いしてインタビューし、じっくりとお伝えします。
 
 第3回目は「選手たちの平日」というタイトルなのに府中アスレティックFCの谷本監督です。
 プレーオフを決勝まで勝ち抜きFリーグ2位となった府中アスレを率いた谷本監督。
 今回は府中アスレの一週間のスケジュールと、あまり知られていない谷本監督の驚くべき経歴を明らかにします。

 

 四国出身、早大大学院卒業! 理系で旅人、フットサル選手歴1年!

選手を引退して就任する監督が多いが、谷本監督は選手時代をほぼ知られていない。今回は府中駅の南、大国魂神社そばにある府中アスレティックFCの事務所にお伺いし、谷本監督の経歴とチームの一週間のスケジュールについて詳しくお聞きしました。

 

<Q.まずお住まいやご家族について教えてください。>
住まいはこの事務所の近所です。それで一人暮らしです。事務所までは自転車で通勤し、遠征などの移動はチームの荷物車で、クラブのスタッフと一緒に移動しています。

<Q.すみません、谷本監督の経歴を僕はあまり知らないのですが、どういった経歴なのか教えて頂けますか?>
僕の経歴があまり表に出ていないですからね。あまり聞かれないですし。

<Q.では生年月日と出身地からお聞きしたいのですが?>
生年月日は1982年9月1日生まれの33歳。香川県出身で大学までずっとサッカーをやっていました。高校までは公立で、大学は高知大学です。高知大学サッカー部は全国大会常連の強豪で、僕が1年生の時には全日本大学サッカートーナメントで全国3位、4年生の時には天皇杯でも3回戦まで行きました。でも僕は4年生までずっと選手をしていたわけではなく、大学3年の時からコーチをしていました。

<Q.高知大学といったらサッカーも強いですし国立ですね。でも在学中にコーチになったのはどうしてですか?>
高知大サッカー部にはAチームとBチームがあるんですが、Bチームは普段から4年生がコーチをして自主的に練習をしているんです。それである時期、4年生が教育実習で不在の時に僕がコーチ役をやりまして、するとチームの成績が良くなったので、4年生が帰って来てもBチームのコーチを続けまして、その評判が良かったので、Aチームのコーチもやることになったんです。

<Q.するとその頃からコーチの才覚はあったのですね?>
そうでもないんですが、元々人に教えるのは好きで、教職に就きたいと思っていましたからコーチ役は楽しかったことはありますね。

<Q.教員になろうと思っていたんですか?>
そうですね。ただ僕は数理情報学科という所に在籍していたんですが、実は2年生を終えて3年生になるタイミングで休学しまして、1年間オーストラリアに行っていたんです。

<Q.1年休学しているんですね。オーストアリアは留学ですか?>
いえいえ。語学を学びに行ったのもあるんですが、単に海外に行ったことがなかったので新しいことを経験したくて、留学ではなく普通に休学して1年間オーストラリアで暮らしました。最初の3ヶ月はワーキングホリデーで語学学校に行って、でもその後はフリーで好きなことをやっていましたね。現地でアルバイトしたり農家で手伝いながら寝泊りしたり(笑)。

<Q.凄いですね!いい経験ができましたか?>
それはもう日本では体験できないことを沢山経験できましたね。オーストラリア人だけでなく、インド人とかスイス、ドイツ、韓国人とかいろいろな人と出会えましたし、簡単にいうと日本人の感覚にないくらい「大らか」というか、テイクイットイージー=気楽に行こうぜ、っていうのを体感しましたね。
でも僕は一浪した上に休学したんで、4年生の時には他の学生より2つ年上になってしまって。それもあって他の選手と一緒にはやり難いっていうのもあって指導者の側に回されたっていうのもありますね。

<Q.驚きました。海外で長期間、旅して来たっていう人の話はたまに聞きますが、全国レベルの体育会系で本格的に活動している人が途中で1年休学してというのは初めて聞きました。>
僕にとって大きな経験でしたね。それがその後の僕の多くを占めているというか、その後の人生の考え方が大きく変わったと思います。

<Q.大学卒業まで、まだフットサルはしていないですね。>
そうですね。そのあと早大大学院に行って、九州に行って、就職して、府中で事務をして・・・長くなりますよ。

<Q.早大大学院!? 就職? えーと、ではなぜその後監督になったかはまた後で聞かせて頂くとして、この企画のテーマである平日のスケジュールを教えて頂けますか?>
アスレは午前中が練習なので、昼に練習が終わったらこの事務所に来て、夕方5時くらいまで事務仕事をしています。
練習の休みは試合の曜日に関わらず月曜日です。ですので金曜日に試合があれば土日月と休みになりますが、日曜日が試合の時も休みは月曜日だけです。金曜日の夜に試合の時は午前中の練習はなくて、試合前に早く集まって練習してから試合に挑みます。

練習場は、味の素スタジアム(調布市の西端・府中の東)のフットサル場ですが、週初めの火曜日だけ、小金井市(府中の北)と府中市の境にある東京工学院専門学校の施設で行っています。東京工学院専門学校はウチのスポンサーをやって頂いているんですが、トレーニングジムと体育館が併設されているので、ウエイトトレーニングを取り入れて練習しています。
それで練習が終わった午後は事務所に戻って、チームのスケジュール管理などの事務仕事があればそれを手伝いますし、それが終われば練習メニューを考えたり映像編集をしたりしています。


  谷本監督・ある1週間のスケジュール
  

<Q.遠征の時はどういったスケジュールで動くんですか?>
うちは基本前日移動です。例えば土曜日の夜に神戸で試合、っていう場合には、金曜日の早めの時間に移動して、翌日の試合の時間と同じ時間に現地で場所を取って練習します。
試合が午後2時とか早い時間なら、前日の同じ時間にこっちで練習してから遠征に出ます。そうすると現地に到着するのは夜になりますが、とにかく試合と同じ時間に前日練習することを大事にしていますね。

<Q.移動の手段は?>
飛行機は北海道と大分だけで他はバスですね。ウチはチームバスはなく、その都度観光バスを借りています。
出発時間は翌日の試合の時間によるわけですが、現地に着いてから前日練習の場合には朝7時とか8時に出ることもありますね。神戸や大阪なら7-8時間移動にかかりますから、翌日の試合が例えば午後3時の時には、その前に着かないといけないので、早朝に出発しないといけませんからね。

<Q.前日練習は必ずするんですか?>
そうですね。それにバスの移動だと体がコワ張ってしまうのもありますから、それをほぐす意味もあります。

<Q.昼にこちらで練習して現地に夜遅くに現地につく場合は?>
それは全体練習はないですね。選手個々がストレッチしたりはしていると思いますが、そこは選手に任せています。

<Q.食事は皆で取るんですか?就寝時間は?>
夕食は各自自由です。寝る時間も自由ですが、翌日の朝食は時間を決めてチーム皆で取ります。

<Q.朝食の時にはミーティングなどは?>
それはないですね。もう事前に戦略は伝えてあるので、会場に入ってから簡単に10分くらいの確認だけです。

<Q.すると試合が夜だと朝食からかなり時間が空きますね。>
その時間も選手は自由なのですが、あまり時間があると昼寝をし過ぎてしまう選手も一部いたりして、それも良くないなと思った時には、自分たちが勝った試合の映像などをまとめて見せて、良いイメージを持たせて時間をつぶしたりすることはあります。

<Q.昼に観光に行ったりもOKなんですか?>
さすがにそれはないですね。皆ホテルでゆっくりしています。

<Q.例えば神戸で中華街に昼食取りに行ったりは?>
それ位ならありますね。まあその程度ですね。

<Q.当日移動は全くないのですか?>
浜松で夜の試合ならありますね。名古屋より向こうならありません。

<Q.小田原など、関東のアウェーの試合は?>
それは各自現地集合ですね。試合の2時間前に集合が基本です。

 

<Q.次の対戦相手の分析というのはどの程度やるんですか?>
相手チームにもよりますけど、ちょうどウチは月曜日にチームの活動がないので、その日に一日かけて分析を一気にしてしまいます。火曜日にリーグから前節の映像が届くんですけど、それを見てからだと間に合わないので、大体1節前の試合を月曜日に見て、作業の進み具合にもよりますが、前回戦った時から相手に何か変化=戦術が変わったとか新しい戦力が入ったとかがあれば、火曜日の練習の時にある程度編集したビデオを見せて選手に伝えます。今週こういう戦術で戦おうと思っているからこういう練習をしようとか、それを意識してトレーニングしてくれ、といったことを伝えます。

<Q.ビデオは火曜日の工学院の施設で見せるんですか?>
プロジェクターでコートの壁とかを使っても見せられるので場所はどこでも大丈夫なんです。だから火曜日の工学院でなくても味スタで水曜に見せたりもできます。

<Q.ビデオの編集の要点は?>
相手の攻撃と守備の形を見せて、長くても10分くらいですが、それを練習を始める前に全員で見て、相手がこうだからこういう戦術で行くぞ、という話をします。

<Q.練習のメニューは相手によって変わるんですか?>
毎週同じということは絶対ないですね。軸となるメニューはありますけど、それを毎週アレンジして。たとえば前プレが強いチームだったら、いつものボール回しに2タッチ以内で離すという制限をつけたりとか、そういう工夫をしています。

<Q.火曜日にビデオを見せるとして、試合が近づいた金曜とかに最終確認のミーティングもあるんですか?>
あります。昨年までは必ず試合の前日に時間を取っていたんですが、いまも木曜日か金曜日に10分から15分くらい最新の映像を選手に見せて、確認のミーティングがあります。そうすると監督としては2度ビデオを編集しなければいけないので大変なんですが、やはり理想でいえば週の初めと最後に両方見せたほうがいいと思いますね。
まず週の始めに頭を次の相手に切り替えさせて、そして最終確認と最新の相手の追加情報を入れて、試合に臨むべきだと思います。

<Q.ビデオの編集は大変ですよね?どれくらい時間をかけるんですか?>
いま僕は1試合につき1時間くらいですね。

<Q.早いですね! それを事務所にいる時にやるわけですね。>
直前の試合を含め、勝った試合と負けた試合、前回の自分たちとの対戦の試合、で計4試合くらいを見て戦術を考えながら編集しますね。
戦略を立てる時はあまり前節の試合には拘らないですね。対戦相手が自分たちでない試合では戦い方も違いますし、一番参考にするのは前回の自分たちとの対戦ですかね。選手も自分たちの試合のほうがイメージしやすいのもありますし。
ただセットプレーなどは新しいプレーを取り入れたりするので、最新のゲームを見たほうがいいと思いますので、そういうのが見つかった時などは火曜日以降でも追加してビデオを見せたりしますね。

 

<Q.毎週変わるという練習の内容はどんなものですか?>
練習メニュー自体や、アップについてはあまり変えないんですが、中身のテーマが変わるんです。火曜日が対人形式やカウンター形式の練習。水曜日が紅白戦。木曜日と金曜日が攻撃か守備に絞った練習を一日づつ。

<Q.攻撃や守備に絞って一日づつ、というのは?>
例えば次の相手が名古屋さんだったりしたら、今日はハーフでの守備がテーマだとか決めて、形を確認したりメンバーを組み変えてやったりします。他にも今日はプレス回避がテーマだとか、前からプレスに行ったりとか、それを攻撃か守備かに絞ってで木金で1日づつやります。

<Q.そうすると火曜から金曜の4日間で一つのサイクルになっているんですね。府中はフィジカルのトレーニングを重視しているといつも言っていますが、どんな内容ですか?>
ウチは最低週2回ウエイトトレーニングを行います。火曜日の練習ではアップに45分から1時間くらいかけるんですが、その時にフィジカルコーチとじっくりウエイトトレーニングをします。それと木曜日か金曜日に味スタのコートの横にバーベルを用意して、これもアップと合わせて15分から30分くらいトレーニングします。僕らはよくウェイトトレーニングは強めのストレッチだ、って言っていて、だからアップの時にやって、これで体をほぐすことにもなると考えています。

<Q.府中はフィジカルの強い選手が多くて、これはもちろん狙って集めていると思いますが、どういうチームにしたいというコンセプトなんですか?>
Fリーグは日本のトップリーグなわけですよね。これは僕の考えですが、トップリーグの選手は普通の人じゃ駄目だと思うんですよ。ラグビーとか野球とかっていうのはもう見た目で体が違うのがわかるじゃないですか。でもフットサルは、名古屋を除いて私服を着たらその辺のお兄ちゃんと変わらないと思うんです。でもやはりアスリートとして、ひと目で違うというのが当たり前になってほしい。 僕がチームにオーダーしてフィジカルの強い選手を取ってほしい、育ててほしいと言うのはそういう理由です。僕が監督になる前から府中はフィジカルが強かったと思いますが、僕が就任する前の理由は分かりません。でも僕はそういう理由でフィジカルトレーニングを重視しています。ただ確かに中村恭平監督の時から伊藤監督もそうでしたし、アスレが身体に関する興味が深いのは間違いないと思います。
技術的にはウチはFリーグのなかでそれほど上手くないと思うんですが、上手さで名古屋に対抗できるチームでも最後は身体で押し切られちゃうと思うんです。そんな中、身体で名古屋に対抗できるのはウチだけだと思います。それと名古屋相手で言えば、名古屋は勝たなければいけないチームなのでアクションを起こしてきますが、ウチはリアクションでいいので、試合の終盤では体力的にも有利だと思います。なので例え負けていても1点差で後半に持ち込めば、勝ちに持っていくことは出来るという意識は僕にも選手にもあります。

 強いフィジカルと柔軟な戦略でFリーグ2位となった府中の選手たち。
 

<Q.それでは大学を出てからフットサルを始めて、そして監督になるまでの経緯を教えてください。>
高知大学を卒業後、理系でしたしサッカーで生計を立てるなどは考えていませんでしたから、普通に技術者として良い職業に就くために早稲田大学の大学院に進みました。


 <その後、フットサルに出会い、しかし卒業して就職。そんな谷本監督がなぜ府中アスレの監督になったのか?
  その驚きの経緯は会員コンテンツで掲載しています。>



このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録はお済みですか? 会員について

戻る



Fリーグ順位表

順位 チーム 勝点 得失
1 → team logo 名古屋
オーシャンズ
30 +59
2 → team logo バサジィ大分 26 +34
3 → team logo フウガドール
すみだ
23 +4
4 → team logo 湘南ベルマーレ 18 +6
5 → team logo バルドラール
浦安
18 +1
6 → team logo シュライカー
大阪
18 -1
7 → team logo ペスカドーラ
町田
18 -3
8 → team logo 立川府中
アスレティックFC
16 +1
9 → team logo ヴォスクオーレ
仙台
10 -17
10 → team logo Fリーグ選抜 7 -21
11 → team logo エスポラーダ
北海道
6 -21
12 → team logo ボアルース長野 1 -42

2019年第11節終了時

トップへ→

  • Fリーグ
  • エスポラーダ北海道
  • ヴォスクオーレ仙台
  • バルドラール浦安
  • フウガドールすみだ
  • 立川府中アスレティックFC
  • ペスカドーラ町田
  • 湘南ベルマーレ
  • ボアルース長野
  • 名古屋オーシャンズ
  • シュライカー大阪
  • バサジィ大分