地域チャンピオンズリーグ2013 

  フウガすみだが4連覇できる秘密
   
2013年2月24日、地域チャンピオンズリーグ(以下地域CL)で4連覇を飾ったフウガすみだ。
地域CLは3日間で5試合、しかも最終日はトーナメント。1次ラウンドも1敗でもすれば通過が困難な非常に厳しい大会だ。
そんな大会で4年間も優勝し続けるのは、ただ強いというだけでは不可能。
強運や偶然が重なっている?わけではもちろんなく、そこにはしっかりとした理由がある。

 

フウガは関東リーグでも今期無敗で優勝。このところ、地域リーグでは無敵を誇っている。
Fリーガー、日本代表選手も数多く輩出し、2009年には全日本選手権で名古屋オーシャンズをも破り日本一。
他の地域リーグのクラブと比べ、選手層も環境も別格だと思われがちだ。
しかし、実は多くの人が持っているイメージほど特殊なクラブではない。
単なる、とは言わないがどのクラブでも目指せる地域リーグの1クラブだ。
例えば、SoftBankやJTBといった大手スポンサーが付いてはいるが、
選手は毎月の活動費を払っているし、遠征費も一部負担している。
学生以外の選手達は当然ながら別に仕事を持ち、練習は平日3回と土日のいづれかの週4回で1回につき2時間。
他のクラブと比べて特別というほど多いとはいえない。
地域CLで得点王&MVPとなったチームの顔、太見選手は
大会直前の一週間、仕事の都合で練習に参加できていない。
やはりFリーグとは大きく異なる地域リーグのチームである。

ではなぜそんなクラブが4年間もこの難しい短期決戦で勝ち続けられるのか。
地域CLでフウガと戦ったチームとフウガ須賀監督のインタビューから
その理由を紐解くことが出来る。

フウガの地域CL初戦は名古屋オーシャンズサテライト。試合は3-1でフウガの勝利だった。
試合後、名古屋のトップチームでも出場経験の多い森秀太選手の話の中で
「最初はやれると感じたがフウガは経験抱負で容易に勝てる相手ではないと感じた。
強いというより上手い。」というコメントがある。
Fリーガーとの練習や対戦も多い名古屋サテライトにとって、フウガの個人技やフィジカルは驚くものではない。
しかしその名古屋の選手からしても戦い慣れているというのだ。
特に「リードを奪われてからは攻めても懐が深くかわされた。」とのコメントが印象的だった。
 

次にフウガの2戦目、ボルク北九州との対戦は5-1。
2年前の全日本選手権1次ラウンドでも両者は対戦しているが、
このときフウガはワイルドカード争いで大量得点を狙い、実際16-3という大差で勝利している。
ボルク北九州・小原監督のコメント。
「今日も点差をつけられて敗退していながら、こういうのもなんですが、2年前にはもっとコテンパンにやられたので、その時に比べれば成長を感じられる試合ではあったと思います。2年前の敗戦以来、九州で勝つだけでは満足せずに全国で勝つにはどうしたらいいかを選手にはいつも考えさせてきました。
フウガは戦っていて、何においても上回っているとヒシヒシと感じる凄いチームで、今回はなんとか戦えたという手応えもあり自信にもなりまたが、一方でフウガは出し切っていないようにも感じます。」

そして3戦目、関西リーグ王者で昨年9月にフウガとの練習試合で勝っているSWH。
この試合は予想通り死闘となり3-3の引き分け。
SWHがその前の試合で名古屋と引き分けていたためグループ勝ち抜けはフウガとなった。
SWHはこの試合、怪我で主力の武石を欠き、西も負傷を押しての出場だった。
両監督のコメントを見てみよう。
SWH上田監督「怪我人が出た中で、出場した選手たちは120%を出してくれた。結果は付いてこなかったが、関西でやってきたフットサルを全国で出し切りたいと考えていたので、それは出来たと思う。」
フウガ須賀監督「そろそろ怪我人が出そうかと思ったので選手の起用には気を配った。
今日の試合で金川が少し痛んで、明日の出場は微妙だが、短期決戦はそういうもの。
うちはセカンドセットにも絶対の信頼を置いているし誰が出ても戦力は変わらないようにしている。」


これらのコメントから気づくこと。それはフウガが大会を通したコンディションの調整をしているということだ。
けっして試合のなかで手を抜いているわけでないことは強調しておくが、
しかし対戦相手や試合展開によって、試合のペースや出場選手の調整をしているのは事実。
例えば、ボルク北九州戦では先発はセカンドセットのメンバーとなり、
太見を始めとするファーストセットの出場時間も短い。
この辺りがボルク小原監督の「フウガは出し切っていないようにも感じる。」というコメントに現れている。
もちろんフウガが強いチームで選手層が厚いから出来ることだといえるが、こういった調整の結果、
第3戦の強豪SWH戦にほぼ万全で挑んだフウガと、怪我人を抱えたSWHのどちらが有利だったかは言うまでもない。
それでも引き分けだったのだがら、逆に言えば、SWHが万全だったらSWHが勝っていたかもしれない。
もちろんフウガ須賀監督が「勝ち抜けが目的なので引き分けで良いし、ハーフタイムにも我々の目的は1次ラウンド突破なので
まず引き分けることが大事、と選手に話した。」というようにフウガは引き分けを狙いに行っているので
SWHが勝っていたとも言い切れないが、少なくともどのチーム相手にも圧倒できるほどフウガも強いわけではないということも分かる。


そして決勝ラウンド。
フウガの準決勝の相手はMEMBER OF THE GANG。
試合はフウガが先行して始まり、1点差で終盤へ。最後にギャングに惜しいチャンスがいくつかあったが
結局そのまま2-1でフウガの勝利となった。
試合後、ギャングの木村選手は「フウガは一人ひとりが持つ時間が長かった。プレッシャーは強かったが、1次ラウンドで戦った同じ関東のファイルフォックスのほうがボールの回りが早く衝撃的だった。」と話している。

最後は決勝戦。ミキハウスとの試合は11-4と大差がついた。
ミキハウスの田中キャプテンと馬場選手にお話を聞いた。
「フウガは前プレが凄いのは分かっていたが、やはり簡単には前を向かせてくれなかった。
相手も同じ条件なので言い訳にはならないが、うちは攻撃のチームで、3日で5試合の疲れが出てしまった。
それとフウガのファーストセットはやはり凄いが、セカンドセットのときは十分勝てると感じた。」


大会を通してみるとフウガが最も点差をつけた試合は決勝戦のミキハウス戦。
そういえば昨年の地域CLも決勝戦のリンドバロッサ戦は4-1と点差がついた。
リンドバロッサとフウガは1次ラウンドが同グループで、グループリーグの試合では3-3の引き分け。
このときリンドバロッサの内田監督は「グループリーグの試合では十分戦える相手だと思ったが
決勝戦では疲労が蓄積し、スタミナが切れてしまった。」とコメントしている。

これはどういうことか?
フウガは最後の5試合目の決勝戦まで、選手のコンディションが持つように試合をしている、ということである。
だからすべてを出し切っていい決勝戦で最高のパフォーマンスを発揮する。
一方、対戦相手はどうしても試合が重なるにつれコンディションが落ちる。
もちろん一概に言ってはいけないが、両者のコンディションの差がもっとも顕著になる決勝戦でこそ点差がつきやすいのだ。

繰り返しになるが、フウガも、決勝以前を手を抜いて戦っているわけではない。
これは相手チームの名誉のために言っているのはなく、フウガは地域CLを試合の積み重ねではなく、
「大会を通して一つの試合」と考えてマネージメントしているということである。

ちょっと待て。そんなことが出来るのはやはりフウガの戦力が圧倒的だからだろう。
他のチームがそんなマネージメントをしたら、この厳しい大会を勝ち抜いていくこと自体が出来ない。
もちろんそうだが、先に言ったようにフウガも元々絶対的な環境や、どこにでも簡単に勝てる戦力を持っているわけではない。
ミキハウスがいうようにフウガのセカンドセットはファーストセットほどの圧倒感はない。
それでもそこから、ほころびが広がらないように彼らはしっかり仕事をしている。
怪我人が出ないように、試合の流れを変えないように、そしてファーストセットが苦戦している時には
違うやり方で点を取りに行く。須賀監督が「セカンドセットにも絶対の信頼を置いている。」というのは
ファーストセットと全く同じ戦力ということではなく、こういった役目をしっかりと果たしているからだろう。
またそういった役割りを果たせるセカンドセットや、さらにその控えの選手達は年々入れ替わり、全体の人数を増している。

つまり、フウガが短期決戦である地域CLで優勝するためにやっていることは、
決勝戦までの大会を通じたコンディションのマネージメントと
そのマネージメントが出来るだけの選手層を作る年間を通した努力である。

フウガはこの二つが揃っているからこそ、普通なら組み合わせの運や勢いが大事になるこの大会で4連覇を成し得たのだ。
 

さらに須賀監督に、この大会で勝つのに必要だからセカンドセットや控えの選手の層の厚さを作っているのかと質問してみた。
「決してそういうわけではなく、常にチームを強くするためにチーム内での競争が必要。地域CLに限らずリーグ戦のためにも次の戦力の成長を図っている。」

須賀監督と親交も深いSWH上田監督は敗退後、こんな話もしている。
「怪我人が出るというのも見据えて、既存の決まった選手だけでなく、次の選手が入ってくるようなチーム作りを1年を通してしなければいけないが、その難しさを感じている。パスワークが上手いとか、見ていて面白いとか、そういったプレー面のレベルアップだけでなく、組織全体として勝ちきれるようなレベルアップをしていきたい。」

こうした日々の努力の結果、どのチームも上回る層の厚さをフウガは手にする。
このフウガを地域CLで倒すにはワンマッチで勝てる力だけでは足りないのかも知れない。
 
 
 
ちなみにミキハウスの田中キャプテンにこんな質問もしてみた。
「Q.もう一度フウガと戦うとしたらファーストセットの時は守って、セカンドセットの時に点を取りに行く、などしますか?」
「いやそれはやらないですね。強いファーストセットを打ち破って勝ってこそ価値のあることですから。
それがミキハウスの戦い。うちはそのスタイルを貫きます。」
フウガを賞賛してきたが、これはこれで素晴らしい。勝利だけが至上命題ではないアマチュアスポーツの醍醐味ともいえる。こんな個性の違うチーム同士が戦うのも地域CLの楽しさの一つだ。

最後に、ボルク北九州とフウガは全日本選手権1次ラウンドの3戦目で再戦がある。
ボルク小原監督が「2週間後に全日本選手権があるので、地域CLの手応えと課題をそこに繋げたい。」と話している。
フウガは2年前と同じで大量点を狙ってくる試合となる可能性がある。
ボルクがそれを許さない試合が出来るか、2年間の進歩が試される。ここも注目したいポイントだ。


 
 
     
    Bグループ第1試合 名古屋オーシャンズ サテライトvsフウガすみだ のレポートはこちら
    Bグループ第3試合 SWHフットサルクラブvsフウガすみだ のレポートはこちら
    準決勝 フウガすみだ vs MEMBER OF THE GANG のレポートはこちら
    決勝戦 フウガすみだ vs ミキハウス のレポートはこちら


    
 

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記事: 中根 高磁  写真:中根 高磁 金子 保子


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Fリーグ順位表

順位 チーム 勝点 得失
1 → team logo 名古屋
オーシャンズ
30 +59
2 → team logo バサジィ
大分
26 +34
3 → team logo フウガドール
すみだ
23 +4

2019年第11節終了時

8.18 チャレンジすみだvs町田
7.21 第6節 町田vs名古屋
6.22 開幕戦インタビュー

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関東リーグ順位表

順位 チーム 勝点 得失
1 → ファイルフォックス 9 +7
2 → バディラン
ツァーレ
9 +4
3 → コロナFC権田 6 +3

2019年第4節終了時

12.15 17節 リガーレvsゾット
12.13 17節 ロンドvsファイル
12.122 17節 カフリンガvsショーツ

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